症状説明
◎ 通常は楽しい・悲しい・怒り・不安などの感情は、生活上の出来事による反応として生じます。例えば、離婚や死別などのストレスの後に、悲しかったり、心が張り裂けそうで落ち着かなかったり、不安を感じることは誰にでもあることです。その感情の持続期間や程度は人によっても違いますが、「こんなことがあったのだから、こんな気分になるのは仕方ないんだろうな」と思える、自分なりの「想定範囲」を持っています。
しかし、時に、ストレスから生じる感情の強さが、自分の「想定範囲」を超えると、人はその感情の強さに違和感や苦痛を感じます。
また、理由がはっきりとわからないのに、ゆううつ・不安・イライラなどの不快な感情に悩まされる場合もあります。
これらの「自己違和的な感情」は脳の働きの乱れから生じる「症状」として考えられます。治療により、症状の消失や軽減が期待できます。
◎ 「コンセントを抜き忘れたのではないか」、「玄関に鍵をかけ忘れたのではないか」、「手に汚れがまだ残っているのではないか」など、特定の物事が気になって仕方がない状態を強迫症状と言います。
心配を解消するために何度も玄関に戻って確認したり、手洗いを何回となく繰り返したりなど、自分のエネルギーも時間も心配を打ち消す行為にとられてしまうこともあります。
これらの症状は治療により、「全く気にならないことはないが、ずいぶん流せるようになった」と感じるようになります。
◎ 人前で緊張することは、ほとんどの方が経験のあることだと思いますが、その程度が強いと、何日も前から不眠・食欲不振・用事が手につかないなど、自覚的な苦痛も生活上の支障も強くなります。
また、人前での発表の日にずる休みするなど、そうすることで自分に不利益が生じるとわかっていても、そのような場面を避ける場合も出てきます。
治療により、緊張の程度が減り、「これぐらいの緊張は許容範囲内で苦痛ではない」と感じるようになります。
◎ やる気が出ないのと、怠けているのとは別ものです。
怠けるということは、ある行為をすることが重要ではないと本人が判断し、自分でその行為をしないでおこうと選択している状態だと思います。一方でやる気が出ない状態とは、以前は出来ていた行為をしようと思っても出来なくなっている状態で、むしろ本人の中では焦り、自分自身にいら立っています。行動できないことで自分に不利益が生じる(例えば、学校に行かないことで友達と疎遠になる)とわかっていても行動が起こせないのです。
朝が起きられなくなるのもよくみられる症状です。これまでは朝はちゃんと起きて学校や仕事に行けていたものが、目覚ましをかけても、家族に声掛けしてもらっても起きられなくなります。
治療により、症状の消失や軽減が期待できます。
◎ メンタルの不調から、体のだるさや疲れやすさが目立つ場合もあります。例えば、「食材の買い出しに外出しただけで、その後丸一日横にならないといけない」、「朝起きても疲れが取れていない」、「何日たっても疲れが取れない」などの訴えが代表的です。
「普段の疲労とは違うようなだるさが続く」、「最近極端に疲れやすい」、「内科で検査をしても異常がない」などあれば、ご相談ください。
◎ 寝付けない、夜中に目が覚める、眠りが浅いなどの睡眠の問題は、頻度の高い症状ですが、その背景は実にさまざまです。
◎ 寝ようとすると脚がむずむずして眠れないといった訴えや、夜に寝ぼけて大声を出す、立ち上がる、手足を振り回すなどの特徴的な症状を認める場合もあります。
診察の中ではその原因を鑑別し、それに応じて検査、生活環境の調整、お薬の投与などを行います。
◎ 「心臓がドキドキする」、「のどに何か詰まっている感じがする」、「つばが飲み込みにくい」、「息が吸えていない気がする」、「酸素が足りない気がする」、「職場や学校に行こうとすると吐き気や腹痛がする」、「めまいがする、ふらふらする、手足がしびれる時がある」など、メンタルの不調から様々な体の不調が生じてくることもあります。
それらの場合、内科や耳鼻科、脳外科で検査をしても異常はなく、同時多発的に体の不調が出現することもしばしばです。
外出や出勤、登校などの際に特に症状が目立つなどの状況依存性があることも多く、ゆううつ感や不安、意欲が出ないなどの症状を伴うこともあります。
◎ 集中力低下や忘れっぽさといった症状も、起こる背景はさまざまですが、小学校低学年の頃から現在まで続いているものなのか、それとも、それより後の、過去のある時期から出てきたものかで見立てが変わってきます。また、集中力低下や忘れっぽさ以外の症状があるのかどうかも診断に重要な要素です。
◎ 「イライラが目立って怒りやすい」、「すごくおしゃべりになった」、「お金遣いが荒くなった」、「思い付きで行動する」、「根拠のない楽観論が目立つ」などが、過去のある時期から目立つようになったのであれば、これらも症状と考えられます。
このような症状がある方は、過去の一時期にゆううつ、体のだるさ、やる気が出ない時期があることが多く、長い目で過去を振り返ると、ハイな時期とローな時期を繰り返す傾向があります。
◎ 小学校低学年の頃から一貫してソワソワ、落ち着きない、衝動的な行動が目立つのであれば、上記状態とは違う別の病態と考えられます。
◎ 人との関わりがうまくできない原因がどこにあるのか、いつ頃からうまくいかないのか、考えていく必要があります。
小学生や中学生の頃から、他人との会話がうまく出来ない、ピント外れの返答をしてしまう、注意がそれやすく人の話についていけないなどの、本人のうまれ持った「特性」によって、他人との関係が取りづらい場合もあれば、上述のような心身の変調が過去のある時点から生じて、その結果人付き合いが苦手になっている場合もあります。
◎ 心身に変調を生じることで、仕事や学校など、それまで出来ていた日常生活が困難となり、自宅にこもりがちとなることもあります。
また、人との関わりの困難さが慢性的にある方が、日常生活上の出来事を引き金として自宅にこもりがちとなる場合もあるでしょう。
いずれにしても、いつ頃からそうなったのか、それまでの人間関係や人とのコミュニケーションに問題がなかったのか、引きこもりとなる日常生活上の出来事があったのかなどをお聞きして、引きこもり状態となった背景・原因を考え、状態の改善にあたります。
◎ 見たり聞いたりしたものが何であるかを判断するのは脳が行っていますので、脳の働きが乱れると、聞こえるはずのない状況で人の声が聞こえたり、自分のことを他人が知っているように感じられたり、自分が他人に乗っ取られた感じがしたりすることがあります。
「盗聴される」、「監視カメラが仕込まれている」などの訴え(妄想)も、このような状況の中で生じてくる症状です。
治療により、これらの症状が改善していきます。
治療を行っている主な疾患・状態について
◎ 気分障害
うつ病、適応障害、気分変調症、躁うつ病など
◎ 不安障害
パニック障害、不安障害、強迫性障害、社交不安障害など
◎ 睡眠障害
不眠症、むずむず脚症候群など
◎ ストレス性疾患
心身症(心理的な原因から体に症状が出る病気)、自律神経失調症、過敏性腸症候群など
◎ 摂食障害
過食症など
◎ そのほか
不登校
統合失調症、注意欠陥多動障害、認知症など